屋上とホットケーキ。

本誌インタビュー People Get Ready 完全版 vol.14/ILL-BOSSTINO

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話し合う。態度で示す。手紙を書く。つぶやく。――
思いを伝える方法は、たくさんあれど、結局のところ『伝える』って行為がすごく大事なんですよね、きっと……。
いきなりの文面で『?』な皆さん!実は今回、なんと思いを楽曲に込め、
ライブでそれ『伝える』ということにおいて、圧倒的な存在感をしめす
『THA BLUE HERB』のILL-BOSSTINOさんへのインタビューなのです。
もう、こんなチャンスは2度とない!ということで、5年ぶりに発売されたNEWアルバム『TOTAL』のことから
『伝える』ことの意味とは?みたいな漠然としたことまで、色々とお聞きしてきました。

あっ、もちろん屋上のこともね(笑)。





唐突な質問ですが、屋上と聞いて、何か思いつくことってありますか?

ILL-BOSSTINOさん(以下:B)「うーん、俺は基本的に旅が好きで、特にバックパッカーの旅なんだけど、宿を探す時は屋上にはすごくこだわるよ。朝起きて、シャワー浴びて、ビーサンのままで屋上に上がって、タオル干して、濡れたビーサンと足を乾かしてる時がすごく好きで」

そうやって過ごす時間がですか?

「そうそう。屋上でお酒飲むのも、星を見るのも好きだしね。だから、屋上って聞くと、バックパッカー時代を思い出すね」

旅の中で印象に残っている屋上などはありますか?

a0163747_14303194.jpg「カトマンズ(ネパール)の屋上とかを思い出すね。あのカラフルな布がヒラヒラしている屋上。あとはマラケシュ(モロッコ)の屋上も。結構、屋上で思いついたリリックだったり、そこで考えていたことって、すごくたくさん還元されているよ、自分にとって。屋上まで持って来てもらったチャイを飲みながら、考えたりね。すごくいい時間。屋上にいったら先に違う国のヤツがいて、そいつらと色んなことを話したりもしたな。とくかく楽しい事がたくさんあったね」

屋上と言えば、海外の屋上という感じですか?

「逆に、日本の屋上にはイメージが湧かないな。自分が住んでいた所にも屋上はなかったし、ビルの屋上に登ったこともあまりないしね。なんか、日本って屋上をうまく使ってない気がする。もっと、普通のマンションやアパートにあってもいいのに。『屋上にはでれません』ってのが多い気がするし」

やっぱり色々と危ないからというか……。

「危ないからか。そういう所はつまんない、もったいないよね。だから、『屋上』って聞くとやっぱりバックパッカー時代を思い出すな」

ちなみに屋上でライブをした経験はありますか?

「ない。そういう企画はあったけど、やった事はないなぁ。条件があえば、やってみたいとは思うけどね。なんか、俺たちのHIP HOPって屋根のある所というか、地下でやるのが当たり前みたいなイメージがあるけど」

確かにそのイメージはあります。

「でも、俺はフェスとか、空の抜けている所で音を鳴らすのも聴くのも好きだから、条件があえば、是非やってみたいね」

是非、お願いします!!! そう言えば、先程のバックパッカー時代に考えた曲かもしれないのですが
『路上』の中には『屋上』という言葉も出てきますよね。


「多分、それはカトマンズで書いてたからだと思うよ」

そうだったんですね。



【俺たちがライブで鳴らしている音が、正当な答え】
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曲を書くと言えば、5月に5年ぶりにNEWアルバム『TOTAL』が発売されました。
今回のアルバムはどんな思いの詰まったモノになっているのでしょうか?


「いやぁー、アルバムには俺らのいろいろな思いが全部詰まっているからね。改めて今ここで言うのもあれなんだけど……。とにかく、去年1年で思ったことをすべて詰めたつもり。無数の言葉がアルバムには入っているし、オレはひとつの言葉を伝えたくてアルバムを作っているわけではないし。伝えたい言葉は全部詰まっているんで、聞いてくれた人がその中の言葉をそれぞれチョイスして『自分の中で好きに解釈してくれればいい』ってスタンスだからね」

どの言葉がどう伝わるかは、聴いた人の感性に任せるということですね。

「もちろん、そうそう。ただそれだけでしかないよ。このアルバムで何かを『どうにかしたい』っていうんじゃなくて、これはひとつの俺らの意思表示だから。こうやって全員が意思表示をして、意思をぶつけあって、その中から、一つの方向が見つかるといいなってぐらいにしか思ってない」

その意思表示の中の一つとしての先行シングルの1曲『HEADS UP』は震災後の思いが
かなり直球で表現されているように感じたのですが。


「うん、直球だね」

僕はあの曲を聴いたときに、HP上のマンスリーレポート内の 『3.11特別声明』文章が頭に浮かんだんです。
個人的にあの文章は共感できる部分が多くて。


a0163747_14174255.jpg「あー、あれは文章にも書いてあるけど、いちラッパーとしてではなく、一市民としての震災後の国について、自分の考えを書いたんだけどね。別にラッパーでも、物書きでも、フリーターでも、ママさんでも誰でも書けばいい。みんなが考えることをそれぞれが言うべきだと思う。そういうことをみんなが考えるきっかけにならないと、去年の意味がない。去年起こってしまったことのね。俺はそう思って、あれを書いただけで、別に一ラッパーの役割だと思って書いた訳じゃない。」

確かに、僕も震災前には、考えなかっただろうことを考えるようになりました。

「本当、一億人いれば一億人の考え方がある。俺は反対だけど、仮に原発賛成だって一つの意見だから。そういった違う意見を聞いていくことで、自分の意見も強くなっていくと思う。そうやって自分の意見を育てて、口から出す術をもたないと発展していかないというか。それで、俺は行動しただけ。だからみんなも、それぞれが思うことを、思う場所で、思うままに言えばいいと思う。自由に。」

そういったいろんな意見がでることで、意見がぶつかり合い、次に進んでいけるというか……。

「俺はそう思う。もちろん、俺が書いた意見ですら反対意見も賛成意見もあるだろうし。人に反対されて『うーん、俺は間違っているかもしれないのか?』って思うことも重要だし、そこで、また色々と考えて『いや、やっぱり俺は間違ってない』って思うことも重要。やっぱり、そういうたたき台に自分の意見をださないと何も始まらないよ。と思う」

確かに……。

「だから、俺のホームページも俺の一つのたたき台であるし、このフリーペーパーだって、俺のたたき台になりうるかもしれないし。そうやって、自分の意見をいっていかないとダメだね」

なるほど。そう考えると、アルバムを出すということは
まさにTHA BLUE HERBとしての意思表示をした。ということなんですね。


「そう」

そして、そのアルバムを聴いた人がどう感じるかは分からない?と。

「もちろん。音楽って結局、発売日が過ぎちゃうと、もう俺らの手を離れてっちゃう。買ったヤツのモノなわけ。俺らが言葉でしばる権利なんてないしね。だから、俺が『こうだ』って言ったことを違うふうにとられるのも、俺にとっては楽しみだし。とにかく好きな場面で、好きに楽しんでほしいと思っている。DJだって好きにかけてくれればいいし。もちろん、共感してほしいってのは俺の希望としては大前提だけど。ただ、THA BLUE HERBってヤツらが考える正当な答えが、どこにあるかって言えばライブにあるわけ。俺たちがライブで鳴らしている音が、正当な答え。俺たちが本当に伝えたいこと」

ライブを見てくれれば、それが伝えられる?

「そうだね。だから『これは、いったい何をいってるんだろう?』ってクエスチョンがあるんだったら、ライブに来てもらいたい。それが分かると思う」

なるほど!今日お話を聞いて『伝える』という行為の、その先が何となく分かった気がしました。
ありがとうございます。6月の名古屋クアトロのライブ楽しみにしています!
では、最後に一つだけ質問をよろしいですか?


a0163747_14183259.jpg「何なに?どうぞ(笑)」

では、行ってみたい屋上はありますか?

「あのビルの屋上なんか行ってみたいね(名古屋駅のツインタワーを指して)いけるのかな?」

多分、あそこの屋上はいけなかった気がします。ヘリポートかもしれないです。

「あのビルは?(大名古屋ビルヂングを指して)」

あそこは今の時期は屋上ビアガーデンなるんですよ。ただ、それも今年で最後なんです。
来年にはあのビルは取り壊されてしまいまして……。


「さみしいね」

またの機会に良かったらビアガーデン、ご一緒にいかがですか?

「そうだね、タイミングが合えばね(笑)」

是非よろしくお願いします!




 a0163747_1442135.jpgTHA BLUE HERB
ラッパーILL-BOSSTINO、トラックメイカーO.N.O、ライヴDJ DJ DYEの3人からなる一個小隊。1997年札幌で結成。以後も札幌を拠点に自ら運営するレーベルからリリースを重ねてきた。'98年に1st ALBUM「STILLING, STILL DREAMING」、2002年に2nd ALBUM「SELL OUR SOUL」を、'07年に3rd ALBUM「LIFE STORY」を発表。'04年には映画「HEAT」のサウンドトラックを手がけた他、シングル曲、メンバーそれぞれの客演及びソロ作品も多数。映像作品としては、ホーム北海道以外での最初のライヴ「演武」、結成以来8年間の道のりを凝縮した「THAT'S THE WAY HOPE GOES」、'08年秋に敢行されたツアーの模様を収録した「STRAIGHT DAYS」、そして活動第3期('07年~'10年)におけるライヴの最終完成型を求める最後の日々を収めた作品「PHASE 3.9」を発表している。HIP HOPの精神性を堅持しながらも楽曲においては多種多様な音楽の要素を取り入れ、同時にあらゆるジャンルのアーティストと交流を持つ。巨大フェスから真夜中のクラブまで、47都道府県に渡り繰り広げられたライヴでは、1MC1DJの極限に挑む音と言葉のぶつかり合いから発する情熱が、各地の音楽好きを解放している。
そして、2012年4th ALBUM「TOTAL」と共にシーンに帰還。傷深き混迷極まる列島ステージ最前線へと再び出立!

公式ホームページ: www.tbhr.co.jp

by okujotosora | 2012-06-04 13:48